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やっぱ仲道郁代さんは凄いなァ

自分が中学生の頃から一貫して大好きなピアニストの1人に、仲道郁代さんがいます。
おそらく日本の、あるいは世界のピアニストのなかでも、歴史上もっとも美しい容貌を持った
女性であることは異論ないのでは。

演奏もその美しい姿も柔和な話し方も全部、大好きだけど(そりゃもう結婚したいくらい)、
自分にとって仲道さんが唯一無二の存在である最大の理由は、
「加齢とともにどんどん、際限なく成長して磨かれていく」
ことにあります。普通、年とるとだんだん影が薄くなって演奏にも翳りが見えるじゃない?
彼女はまったくそういうことがないからすごい。年々、それまでとは別人のように飛躍的な
成長を続けている。
これって、俺自身の生き様もそうありたいって願ってるから尚更、憧れるんだ。

さて、ここからは一人の仲道郁代ヲタクの独白です。戻るなら今よ。

仲道さんは若い頃、確かに美貌によるハロー効果?のおかげで華々しくデビューを飾り、
マスコミからもとりわけ注目を集めたところがあったのは否めない。その反面、
「外見が独り歩きしていて実力(演奏)がついていっていない」
というような批判を受けていましたね。実際、ファンである俺からしても、これはちょっと……と
首を傾げざるをえないCDが何枚もあって、将来生き残れるんだろうかこの人、と思って
勝手にハラハラしていたものでした。
肝心のコンサートでも、地味ーなドサ回りをいつになっても続けていて、しかもチケット料金が
他のピアニストに比べて激安なのも二流っぽさが漂ってきてちょっと悲しかったものです。
(俺が中学生の頃、地元にコンサートに来てくれたことがあり感激して出かけたが客は
10人くらいしかおらず、しかも演奏の途中でいびきをかいて眠る人なんかもいてひどかった。
演奏も正直いってパッとしなかった)

でも、「素敵なお婆ちゃまのピアニストになりたい」と公言する彼女には、瞬間的な名声や
短絡的な成功よりも長期的な視野で深く深く音楽への愛を深めていく姿勢が滲み出ていて、
どうしても目を離せませんでした。で、俺のヨミは当たった(←偉そう)。

まず、圧倒的に音が変化したのが、お子さんを出産した後にリリースしたドビュッシーのCD。
それまでの演奏とはケタ違いの完成度でびっくりした。女は出産で化けるって本当なのな。

そのあと、トークライブ演奏会「仲道郁代の音楽学校」や本の執筆、DVDブックなどで
他のピアニストとは一線を画する多角的なアプローチを展開していき、ベートーベンの
ソナタ全集の録音&演奏会あたりからは巨匠の風格が出てきた。
(仲道さんが弾くベートーベンのソナタOp111を初めて聴いたときの衝撃ったらない)

明らかに、音が3次元を超越している。もっと高次の世界から受け取ったメッセージを、
音に託す術を身に着けているんだろう。

華道家の假屋崎省吾さんと活け花&生演奏のバトルライブをやったり、妹さんとの
デュオでツアーを組んだり、エンターテインメント要素を盛り込んだ音楽活動にも精力的で、
すごく人としてのユーモアや音楽への取り組みの柔軟さも伺える。
一部のクラシックファンのためだけでなく、それまでクラシックに馴染みのない人にも
音楽の素晴らしさをわかってほしい、というスタンスを本当に行動で示しているから
素晴らしい限りだ。

で、昨日の夜。
NHKのハイビジョンチャンネルで、「ショパンのミステリー」なる番組を観た。
ようするにショパンの足跡や作品に込められた秘密のエピソードを、仲道さんが
ナビゲーターになって実際にポーランドやパリを訪れて辿っていくというもの
なんだけど。

涙ちょちょ切れました。

なぜショパンのペダルの指示はあんなに細かいのかとか、版によって強弱の指示が
バラバラなのはなぜかとか、ショパン弾きなら興味津々なテーマを18世紀当時の
ピアノを実際に演奏したりしながら仲道さんが解説していくんだけど、
本っ当ーーーーーーーーにピアノを、ショパンを愛して研究してないと出てこない
コメントや感嘆がちりばめられていて素晴らしかった!

特に印象に残ったのが、同じ曲の同じ箇所の強弱記号が版によって「p」のものと「fff」の
ものがあってまったく逆になってることを紹介したときのコメント。

「私は学者ではないので、どちらが正しいかということを追究するわけではないんですね。
演奏家として大事なのは、そこを弱く弾くにせよ強く弾くにせよ、どっちでもかまわないから
『その箇所で音量を変化させるという“強調”を通じて、作曲者が何を伝えたかったのか』を
感じ取ることなんです。そしてそれを演奏に反映するのが使命なんですね」

これ、ナレーションや芝居にもそっくりそのままあてはまる名言だと思いません?
本当に、人としても芸術家としても、女性としても尊敬します。たぶんこの先もずっと。

P.S
……で。気づいちゃった。

俺、ほんとは、仲道さんに憧れて、ずっと仲道さんの背中を追い続けたくてピアニストを
目指してたんだ、って。
で、それが叶わないから、ピアノの演奏からナレーションにジャンルを移して、どうにか、
「音による表現を追究する身」で居続けたいんだって。

俺にとってのナレーションはピアノを演奏することの代替行為だった。

それはそれでナレーションに失礼なような気がするけど、いちおう邪道ではないつもり。
とっても変に聞こえるかもしれないけど、俺はこれからもずっと、仲道さんに憧れて、
仲道さんのようなピアニストになりたくてナレーションに精進するんだろうな。
by ruh23 | 2008-03-19 16:50 | Live!!(視聴覚レビュー)
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